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先日、全国高等学校野球選手権大会(夏の甲子園)が終了。宮城の仙台育英高校が山口の下関国際高校に勝利し、真紅の優勝旗が白河の関を越え東北に着きました。
今年は高松商業の浅野選手や近江の山田投手などドラフトでも話題になりそうな選手が大活躍しました。
そして、夏のもう一つの甲子園があります。それが全国高等学校クイズ選手権(以下、高校生クイズ)です。
今年の高校生クイズは大きな動きがあり、話題になっています。本日はそんな高校生クイズについてわたしなりにお話ししていきます。
高校生クイズとは?
高校生クイズ、正式名称は全国高等学校クイズ選手権は日本テレビが主催するクイズ大会で、1983年に始まりました。
元々は史上最大アメリカ横断ウルトラクイズ(日本テレビ、以下ウルトラクイズ)の弟分として誕生。ウルトラクイズは18歳以上の大学生や社会人じゃないと参加できないイベントです。
ウルトラクイズは1977年に毎年開催、年々人気が高まるにつれて高校生でも参加できるクイズイベントはできないか?というのがありました。
スピンオフで「史上最大の敗者復活戦」が1982年の大晦日に放送され、大好評だったこともあり、当時の出題レポーターの福留功男さん(当時日本テレビアナウンサー)が提案したことから始まりました。
よって、第1回放送は大晦日に「ウルトラスペシャル 第1回全国高等学校クイズ選手権」として開始されました。
第2回からは冠スポンサーとしてライオンが登板し、「ライオンスペシャル 全国高等学校クイズ選手権」として毎年放送されていました。
参加条件は三人1チームで編成、夏の甲子園同様47都道府県代表制度を採用します。ただし初期と一部大会では選抜方式を採用しています。
以後も参加人数は増え、ピーク時には23万人が参加し、ギネスブックにも登録されるほどです。
高校生クイズの路線。
高校生クイズの路線は大きく分けて5つになります。
路線 | 期間 | 司会 |
クイズと人間ドキュメント | 第1回〜第22回 | 福留功男さん 福澤朗さん ラルフ鈴木さん |
芸能人パーソナリティ制度の導入 | 第23回〜第27回 | ラルフ鈴木さん |
知力の甲子園 | 第28回〜第32回 | ラルフ鈴木さん 桝太一さん |
ウルトラクイズのリメイク | 第33回〜第37回 | 桝太一さん |
地頭、創造力 | 第38回〜第41回 | 桝太一さん 安村直樹さん |
それぞれを解説していきます。
第1期:クイズと人間ドキュメント。
高校生クイズは元々ウルトラクイズの弟分として登場した経緯もあることから、総合司会はウルトラクイズの出題レポーターの福留さんが担当することとなります。(ナレーションも兼務)
ウルトラクイズはクイズ番組ながら「知力・体力・時の運」をキャッチコピーにクイズができるだけではダメという路線を打ち出し、体を張ったクイズや意地悪な大どんでん返しなどの演出があり、ウルトラクイズ同様「誰でも参加できるクイズ」をやりました。
キャッチコピーは「知力・体力・チームワーク」です。
また、クイズの間の人間模様もウルトラクイズ同様放送され、挑戦者に感情移入できたのも特徴です。
この路線は福澤朗さん(当時日本テレビアナウンサー)、ラルフ鈴木さん(日本テレビアナウンサー)まで引き継がれるようになります。(ナレーションは福澤さん初期の頃はOPEDぐらいだった)
第2期:芸能人パーソナリティ制度の導入。
しかし、第22回大会(オーストラリアの頃)になると、参加人数も減少し(それでも今よりかはマシ)人間ドキュメントにもマンネリ化や人気に陰りが見え始めます。
そこで大幅なリニューアル。23回大会では芸能人パーソナリティ制度を導入。最初に起用されたのは漫才コンビの爆笑問題です。
過去にも芸能人ゲストはありましたが、それはあくまでちょい役程度で大きく起用されることはありませんでした。爆笑問題はいわば「主役の高校生の盛り上げ役」を買って出たわけなので、目立つことはありますがこの頃は「主役は高校生」であることを忘れてはいませんでした。
さらに第6回放送以来の選抜方式を採用、「おらが町の高校が出ない」とモチベも下がるでしょう。実際出てない都道府県の高校はありましたし、複数の高校もありました。
ナレーションもアナウンサー(当時は鈴木さん)が完全に関与されずに別の方がやっていたので、完全に22回大会とは別物になっていました。
この路線は24回大会まで開催され、「都道府県代表制に戻してほしい」という要望を受けて25回大会から22回大会以前の路線に戻します。(ナレーションも基本司会者に戻る)
26回大会から再びパーソナリティを起用します。起用されたのは漫才コンビのオリエンタルラジオで、こちらも爆笑問題同様の「高校生の盛り上げ役」として大会を盛り上げました。
それでも人気や視聴率の低下に歯止めがかからなくなります。
第3期:知力の甲子園。
28回大会でこれまでの人間ドキュメントというのを取りやめ、知識にウェイトを置くようになります。これがいわゆる「知力の甲子園」です。
これまでは「知力・体力・チームワーク」がなけりゃ優勝できない高校生クイズでしたが、この回からは「知力」を重視するようになります。
この路線は視聴率の回復につながり大成功します。
ところが、わたしのような昔からのファンは「?」を感じるようになり、「こんなの高校生クイズじゃない」と思うようになります。
一方で「これが高校生クイズ」と思うファンも少なくなく、これが「ドキュメント派」と「知の甲子園派」でファンが二極化される結果となっています。
また超難問についていけない視聴者や参加者も少なからずおり、視聴率は回復したものの参加者はさらに減少する結果となっています。(しかも第2期の途中から加人数非公表になってる)
第4期:ウルトラクイズのリメイク。
第33回大会から再び今までの路線に戻すことになります。
22回大会ではオーストラリアまで行きましたが、34回大会では文字通りウルトラクイズのリメイクと言わんばかりにアメリカで行うようになります。
この頃には参加チームを二人1チームに編成。
22回大会との違いは「番組の演出」「パーソナリティの起用」があり、原点回帰と言われていたそうですが、全くの別物となっていました。
第5期:地頭、創造力。
第38回大会から「地頭力」というテーマを打ち出し、クイズができるだけではダメということで地頭や想像力をフルに発揮するクイズが展開されました。
ナレーションは23回大会以降一部の回を除き総合司会がやる機会が少なかったのですが、この頃にはナレーションや説明を総合司会(この頃は桝太一さん(当時日本テレビアナウンサー))がやるようになります。
参加チームは今までの三人1チームに戻されます。
今年は?
今年のテーマは「クイズにかける夏 努力が報われる日」とのことです。路線としては第3期の知力の甲子園に近い形となります。
近年のパンデミックや参加人数の激減で第1次予選はリモートで行い、通過チームは第2次予選を東京で行いました。最終的に12校が「決勝大会」ということで9月9日、19時から2時間スペシャルで放送予定です。
今までで大きく違うのは以下の通り。
1:全国大会のくくりがなくなり、選抜方式になった。
24回大会以来の選抜方式を採用。
以前も全国一律のスマホ予選はありましたが、それでも各都道府県の代表を選抜する方式を採用していました。
今年の大会はそれを(あえて)廃し、上位校選抜方式となります。こうなると出てこないエリアの都道府県だって当然出てくるし、同一エリアの複数の高校も出ます。これは23回大会の頃と同じですが、さらに絞った形となります。
あえて廃しと書いたのは、元に戻す可能性があるということです。実際ディレクターが公言されています。
また、全国大会という括りでしたが、今回は決勝大会という形式。M-1グランプリ(朝日放送)などと同じやり方です。だから第2回戦を別日に行なっています。
その第2回戦がペーパーテストだったそうで、以前の地方大会の第2回戦とかで行われていることを全国一律で行なっている形となってる気がします。
2:メインスポンサー・ライオンの撤退。
高校生クイズのメインスポンサーであるライオンが撤退しました。よって今まで「ライオンスペシャル」という冠がありましたが、今年はありません。
放送時間が金曜19時からと今までの21時開催とならずに(過去20時からスタートした時もある)ライオンがメイン撤退したことにより、その枠のスポンサーがメインになるのは確実です。
で、金曜ロードショー(日本テレビ)は通常通り放送されるみたいです。ちなみにるろうに剣心(フジテレビ)の実写映画とのこと。
なぜ盛り上がらないのか?
前振りが長くなりましたが、ここからが本題です。
高校野球は毎年盛り上がりますが、高校生クイズはどんどん盛り下がり縮小傾向です。なぜそうなっているのか?を考えます。
個人的に思っているのは以下の通り。
- 多様化。
- 少子高齢化(参加人数激減)
- ついてこれない(参加人数激減)
- イベントとしての高校生クイズの規模縮小。
- 即足切り(敗者復活がない)
- 二極化(ドキュメント派と知力の甲子園派)
- 番組の過剰演出(いうに語らず)
イベントとしての高校生クイズの規模縮小。
参考サイト:https://nageyarism.hatenablog.com/entry/20080906/p1
この方も書いていますが、高校生クイズはいわば「一大イベント」です。
高校野球がお客さんを招いて、高校生が参加して盛り上げています。これは他のイベントや大会も然り。
高校生クイズは?というと、これまで北海道大会や東北大会など地区予選がありました。(北海道、東北、関東、北陸、中部、近畿、中国、四国・岡山、九州、沖縄という組み合わせが一般的だった)
参考リンクにも書かれているとおり一部大会では総合司会が足を運んでいるわけでなく、一括で地方大会の司会を別の方(それでも日本テレビアナウンサーが多い)に任されてることもあります。
これは4代目司会者の桝さんになってから顕著になってしまいます。
予選会の数が増えてしまったこともあり桝さんだけでは捌ききれないのとスケジュールの都合もあってか代理司会が多くなっているのです。(実際桝さんが愛媛県に降り立ったのは高校生クイズの司会ではなく系列局RNB南海放送のイベントでした。)
ちなみに、三代目司会者の鈴木アナも後期は出ていない大会があります。わたしは第29回四国・岡山大会(愛媛県松山市で開催)に足を運んだことがありますが、その時は鈴木アナでした。第30回では藤田大介アナウンサーが代理司会をやっています。
やはり有名番組の司会者が地方で司会をするだけでも見に行きたい高校生は非常に多い。それなのに出てこないのはガックリくるよね。
その後2019年以降からはスマホ予選に切り替わっており、そこから47都道府県の代表校を選抜する方式でした。今年はそれを取りやめて全国一律にしたのです。
これによりいちいち司会者が地方に足を運ぶという手間は無くなっています。別の言葉に変えたら「コストカット、コストダウン、制作費削減」ですね。今年はライオンがメインスポンサーから撤退したのも併せて規模縮小がさらに顕著になってる印象を受けます。
ドキュメント派 VS 知力の甲子園派。
知力の甲子園が好評だったことと今の世代は「高校生クイズは知力の甲子園」と思ってる方も少なくなく、当初の「ドキュメント路線」の視聴者と二極化しています。
だから第4期のウルトラクイズリメイク以降「つまんないから元(知力の甲子園)に戻せ」という視聴者も少なからずいます。それだけ知力の甲子園は視聴者に強烈なインパクトを与えました。
わたしは個人的に昔ながらのドキュメント路線の方ですね。知力の甲子園は過剰演出があまりにもひどかったので・・・
クイズは高学歴プレイヤーとクイズ研究会のもの?
知力の甲子園以降、クイズ番組は「学歴」をアピールすることが多くなります。
厳密に言えばクイズプレゼンバラエティ Qさま(テレビ朝日)が始まりで、同番組企画のプレッシャースタディーに参加してる芸能人を「インテリ芸能人」と称し、「〇〇大学卒業」などと書かれるようになります。
そして高校生クイズの知力の甲子園でも「東京大学」「京都大学」「医学部」の輩出を大々的にアピールし、「天才頭脳は地球を救う」とか大袈裟に言われるようになります。
知力の甲子園が大成功してからさらに学歴を重視するようになり、第4期以降も「学歴」をアピールします。
頭脳王(日本テレビ)、東大王(TBSテレビ)、ネプリーグ(フジテレビ)なども同じようにアピールするようになります。ないクイズ番組を探す方が難しいかもしれません。
ただ、これらの学歴プレイヤーは決まって「クイズ研究会」のメンバーであることが多く、知力の甲子園路線だった頃に開成高校が連覇を成し遂げますが、開成高校にもクイズ研究会は存在します。
クイズ研究会についてはウルトラクイズを開催された頃から言われており、特に有名なのが立命館大学クイズ研究会でした。
ウルトラクイズも第11回大会以降クイズ研究会のメンバーが多く残るようになり、ほとんどの回で優勝するケースが多くなります。(過去にもクイズ研究会やクイズクラブのメンバーが残ることがあった)
高校生クイズも例に漏れず、クイズ研究会のメンバーが優勝するケースはあったってことです。
今のクイズはタレントか高学歴(クイズ研究会)の挑戦者がメインになってる気がします。それだけクイズの敷居がこの10年で高くなったと感じています。(学歴アピールという演出面はカスだが)
それでもまだ手軽なのはパネルクイズアタック25(朝日放送)ぐらいでしょうか?(もちろんないわけではない)
もちろん実際の挑戦者が楽しんでいたらそれでいいと思いますね。
芸能人と過剰演出。
わたしの高校生クイズ離れを決定づけたのがやはり番組としてのクオリティ。
大会は低迷すれば梃入れするのは当たり前なのですが、それでも見る側からしたらやかましい演出があれば白けて見なくなると思います。
23回大会からテロップがふんだんに使われ、25回大会以降は常時テロップ。
そして知力の甲子園以降は類を見ないほどの過剰演出が鼻についてしまいます。つまりはやかましい。
それらの番組は例に漏れずナレーションや芸能人頼りになり、テンポが非常に悪くなっています。
また超難問って言っても「クイズ御用達」「高校生レベルの問題」を大袈裟に表現してるだけ。あと高学歴高校を大々的にアピールしてるのもあったな。そうじゃない高校との格差がひどい。
だから第4期でウルトラクイズのリメイクをしてもやかましい演出で白けるのはそうゆうことです。特に当時ウルトラクイズや高校生クイズ(第1期)を見てた視聴者は少しながら違和感があるかもしれません。わたしはあった。
即足切り(敗者復活がない)
また、近年の高校生クイズはいくら47都道府県の高校が全国大会に出てもテレビに映る時間は数分、下手すりゃ映らない高校も出てきてるぐらい。
知力の甲子園以降になると、全国大会第1回戦の進出校が8〜15校程度に絞られることもあり、先述の高学歴高校をアピールすることも踏まえると「本当に参加してるの?」と言わんばかりにすぐ終了です。
去年、敗者復活が行われましたが、実際は空席が空いているためのクイズだったそう。
第4期の原点回帰?の時は第1回戦を10分で済ませており、そこで8校に絞られるので残りの高校は敗者復活もなしでそのまま「地元直行」。もちろん放送時間の都合もありますが、さすがに短すぎる。
エコ贔屓がマジで酷い。
第28回大会以降、著名な進学校を目立たせるようなカメラワークがあり。そうでもない高校はどうでもいいやみたいな印象を受けます。
これじゃあ本当に参加してるの?と言わんばかりの状況。そして即足切りもあるので余計目立ってしまいます。
当然だけど、こんなんじゃあ感情移入も応援もできません。
まとめ。
まとめです。
高校生クイズは高校野球と比べて盛り上がってないのはなぜか?ということでお話ししました。
「高校生クイズというイベントは相変わらずいい」と思いますが、「高校生クイズという番組はダメ」ということです。それだけ白ける状況が続いているわけです。
知力の甲子園が一つのターニングポイントとなっており、それが今に引きずっています。
第2期のパーソナリティ制度から何かしら今に至るまで残っており、今残っていないのはもはや第1期のドキュメント路線だけです。「パーソナリティ」「過剰演出」「学歴偏重」は現在でも残っています。
高校野球は時間が許す限り生放送されますが、高校生クイズは収録なのでどうしても時間内に収めなければなりません。
以前まではテンポもよく見やすかったのですが、今は今のテレビの過剰演出が多くなって見づらくなっています。
結局は数あるテコ入れとそれによる過剰演出に白けてしまい、どんどん衰退していると思います。
本日9月9日の19時より全国大会(決勝大会)が放送されますが、どうなるか見ものです。
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