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本日はスーパーマーケットのお話です。
愛媛県松山市に本社を構える大手スーパー、フジ。四国4県と広島県、山口店に単営で100店舗ほど展開し、フジグランという大型ショッピングモールを経営しているスーパーとして知られています。
そのフジは先日イオンとの経営統合を発表。それについて解説及びわたしなりの見解を述べます。
Contents
どうなるの?
具体的には以下の通りです。
- 2022年3月に現在のフジは持ち株会社となり、事業会社としてのフジを立ち上げる。
- その事業会社とマックスバリュ西日本(マルナカなど)は持ち株会社の子会社となる。
- 持ち株会社はイオンの連結子会社となり、株式上場を維持。逆にMV西日本は非上場。
- 持ち株会社、事業会社とマックスバリュ西日本は2024年3月を目処に合併。(存続会社は不明)
- 屋号はそのまま。
- 物流、商品の最適化とコスト削減。
- 結果的にフジ、マルナカ、マックスバリュが同じ会社になる。
この経緯としては以下の通り。
- 人口減少、高齢化による市場規模の縮小などで地域の活力低下が危ぶまれる。
- パンデミックによりライフスタイルが変化、生き残りをかけた時代に突入。
- イオングループの連携をより強化する。(2018年の資本提携時は距離を置いていた)
- ドラッグストアーなど激安ディスカウントストアが台頭してきてる。
このように、一番の理由は生き残りです。
近年は再編が多くなり、スーパーマーケットでも例外ではありません。イオンの場合は同じ大手スーパーのニチイ(のちのマイカル)やダイエーを傘下に収めています。地方でも香川県と岡山県に本社を構えるマルナカおよび山陽マルナカもイオングループ入りしています。
また、九州のコスモスやトライアル(四国にはないが)、ダイレックスの進出、フジの関連会社の一つであるレデイ薬局(くすりのレデイ)など、ドラッグストアの台頭も理由ですね。
特にコスモスは特に価格が税込っていうこともあるため、脅威と言えます。(フジだったら税抜き98円(税込105円)の品物がコスモスだったら98円っていうケースもザラ)その証拠に株価もJR東海と同程度の価格を維持しています。(むしろ上がってる)
フジの永遠のライバルであるイズミ(ゆめタウン)もフジの提携に先駆けてセブン&アイHLDGSと提携をし、セブンプレミアムの販売等を行なっています。
それだけ、再編が続いているのです。
特に中四国は大手スーパーのイズミやフジを中心に激戦区であると同時に人口減少、高齢化が進んでいるのも事実です。
そのため、地域の活力がなくなるのを懸念して再編が続いているわけです。
そもそもフジって何?
「フジ」という通称は一般的に「株式会社フジテレビジョン(フジテレビ)」のことを指しますが、愛媛県ではもっぱら「フジ」といえば「株式会社フジ」というスーパーマーケットです。
そのフジのルーツは戦後・広島県の闇市になります。広島駅前で始めたオークションが起源で、1950年に衣類の卸問屋である十和織物(現在のアスティ)を立ち上げます。
同じ闇市がルーツの企業は先述のイズミもそうです。イズミも創業者が干し柿を売ったことが始まり。その後に同様に衣料おろしとして山西商店を立ち上げ、衣料メーカーのポプラ(コンビニとは別物)ののちにスーパーマーケットであるイズミ(当時はいづみ)を設立します。
1966年に創業者がアメリカの流通事情を視察したのを機に小売業への進出を決断します。その小売業というのがフジです。
フジは広島の会社が立ち上げてるのにも関わらず愛媛で興したのは広島の取引先との配慮からだそうです。よって、本社は創業当時から一貫して松山市にあります。(市内の本社移転はある)
ただ、1号店は近年建て替え工事を行なった宇和島店からで、松山に出店するのは翌年1968年の湊町店(現存せず)からです。
その後、愛媛を中心に販路を拡大、配慮をしていた広島県には1981年(現在のフジグラン高揚)に進出。愛媛と広島を中心に展開します。
そして1989年に本社・本店であるフジ駅前店(フジショッピングスクエア駅前店)の建て替え工事を行います。それがフジグラン松山です。
フジグラン松山という大きな投資は成功し、2000年あたりから四国4県に拡大していきます。
現在も愛媛県・広島県を中心に四国4県、広島県と山口県に100店舗ほど展開しています。近年はイオンの提携もそうですが、愛媛県の中小スーパーの救済にも一役買っています。
四国のスーパーマーケット事情。
瀬戸大橋が開通するまでは四国のスーパーマーケットは独自路線を歩んでいました。そのため、中国地方や全国レベルのスーパーはあまり無かったとも言われています。あってもニチイやダイエーかな?
愛媛県ではフジ、香川県ではマルナカ、高知県ではサニーマート、徳島県ではキョーエイが主なスーパーマーケットです。
瀬戸大橋開通後は本州資本のスーパーがこぞって進出してきます。特に大きいのはやはりイズミでしょう。
イズミは当時九州地方に進出しており、四国の進出も考えていました。1998年高松市にゆめタウン高松を開業、現在でもイズミの超ドル箱店舗として君臨しています。
イズミの進出に続けとばかりに香川県を中心に本州資本のスーパーが進出します。広島県のエブリイ、岡山県(本社は広島やけど)のハローズや大黒天物産(ラムー)も進出。香川県はスーパーの激戦区となってきます。
香川県でもマルナカ以外にも古くからあるマルヨシセンター、ムーミー、きむらなども頑張っています。そのうちマルナカはイオン、マルヨシはイズミの傘下です。
愛媛県は長年フジを中心にセブンスター(一六タルトの一六本舗の子会社)、ママイ(フレッシュバリュー)、しんばし、スーパーABC、サニーTSUBAKIなど地元スーパーを展開しています。
が、サニーTSUBAKIは経営破綻、ABCも苦戦が続いていることからフジの助けを借りています。しんばし(ポイントカードはイズミ(ゆめカード)が管理)も経営破綻後はフジが土地を取得。フジも地元スーパーを守るためにやっているのです。
そんなフジもイオンとの強化を図ると発表します。
規模。
フジはおよそ120店(関連会社含む)で3,000億円の売り上げを誇っています。マックスバリュ西日本はマルナカとの統合もあってか380店舗で5,000億円ほどの売り上げを計上しています。
これらを統合、合併することによって、8,000億円規模のストアーとなり、ライバルであるイズミ(グループ単営で6,700億円)を上回る計算となります。
イズミはほぼ単営でこの数字ですが、フジ・マックスバリュ・マルナカは合併でこの数字ですからね。つなぎ合わせてライバルのイズミを圧倒します。
フジはイオン以外にも同じイオン系列のツルハグループ(レデイ薬局)や佐々木興業(シネマサンシャイン)やユニー、イズミヤ、サンリブとも関係があり、完全子会社に仮になるとしても話し合いは出てくるでしょう。それだけイオン化は非常に困難。
フジのショッピングセンター。
フジのショッピングセンターはフジグランです。また、愛媛県伊予郡松前町にはエミフルMASAKIというショッピングモールがあります。
フジグランは1989年のフジグラン松山開業を機にフジショッピングスクエアをフジグランに名称を変えたり、新規にフジグランを開業していました。
しかし、近年は市場規模の縮小や店舗の老朽化もあいなってか、小型店舗(いわゆるスーパーマーケット)の建て替え工事や新規出店が中心となり、フジグランの新規出店は2014年のフジグラン北浜(八幡浜市)を最後にしていません。(イズミはゆめタウンの新規出店を継続中)
ただ、既存のフジグランはほとんど閉店することなく現在でも営業を続けています。それだけ必要な店舗となっているのです。
また、フジグラン松山、エミフルMASAKIのリニューアルやフジグラン広島の建て替えも行っています。
そのエミフルMASAKIもイオン(イオンリテール、イオンモール)との競争に勝っています。皮肉にも競争相手と統合するという状態に今なっているのです。
また、JT松山工場の跡地にイズミが再進出(実はイズミは松山に進出してたが撤退。現在も再進出できてない)する予定でしたが、商店街の反対で頓挫し、結局フジとケーズデンキとマンションができて現在に至ります。
それだけフジは地元住民との関係が強いのです。
プライベートブランド・スタイルワン。
フジから発売しているプライベートブランドといえば「スタイルワン」です。
スタイルワンは元々ユニー、イズミヤ、フジの3社共同のプライベートブランドとして発売していました。ユニー、イズミヤ、フジ以外にもそれぞれの関連会社であるサークルKサンクスやレデイ薬局にも販売しています。
現在でもユニー、イズミヤ、フジ、レデイ薬局の他にサンリブでも販売しています。
ただ、開発元は現在ユニーからフジに移管しています。理由はユニーがファミリーマート→ドンキホーテのグループ入りしたため。ファミマとの統合でサークルKサンクスは消滅、PBもファミマのものに変わっています。
ユニーはのちにファミマからドンキホーテと経営統合し、ドンキホーテ(PPIH)の完全子会社として現在に至ります。
イズミヤも阪急百貨店(H2O)グループに入った後は食品スーパーとして近畿圏で展開するようになります。(元々ショッピングセンターもあり、上場し、近畿以外にもあったため、規模縮小)
ただ、スタイルワンの供給は現在も続けています。イオンとの強化によりスタイルワンの廃止が囁かれそうです。
レデイ薬局は現在ツルハグループで、元々フジも関係を持っており、ユニーやイズミヤ、サンリブを考えたらスタイルワンの廃止はあり得ないと思う。逆にマルナカにスタイルワンを置くことはあり得るかもね。
現在の状況。
現在フジはイオンと資本提携を結び、イオンはフジの大株主であるアスティから株を買い、フジもマックスバリュ西日本(マルナカ)の株を購入しています。
同様にフジはジュエリーブランドの4℃で知られるヨンドシーホールディングス(元々アスティが経営統合した先)の株を同社に売却します。
これにより、創業会社であるアスティとの関係は薄くなり、イオンとの関係を強化することになります。(アスティはフジの株を現在も保有している。)
すなわち、アスティの株を上場してどこかが買えばフジや4℃を支配できる状況だったのです。(フジテレビやセブンイレブン同様フジも親孝行会社です。)
元々、イオンは経営破綻ののちに傘下に収めたニチイやダイエー同様、全国規模のレベルで中央集権的なものがあったとも言われています。そのため、現在でも「品揃えがワンパターン」という意見も見られます。(イオン傘下後のマルナカも同様に言われている。)
イオンがそこから地域集権的に舵を変えたのはやはり人口減少や高齢化、物価高騰などもそうですが、一番は地方のマーケットに弱いのです。
だから、近年イオンは地域ごとにセクターをわけ、そこで経営する手法を取ってると言われています。そのため、一時期屋号廃止を取り沙汰されたダイエーは現在でも関東・近畿エリアで営業しています。同時に近畿エリアにあるマルナカの経営を山陽マルナカからダイエーに移管しています。
フジはその分中国四国(といっても山陽四国だが)の風土を理解しているし、フジにとってもユニーやイズミヤが他のグループ(ドンキホーテ及び阪急百貨店)に入ったこともあり、生き残らなければならない(=四国経済が衰退するのを防ぐ)ということでそれぞれの利害が一致、資本提携を結んだということです。
それだけ、フジは四国経済を守るための会社に成長しているのです。
今回はイオンとの関係を深くし、地域の風土を理解し、人材交流、物流網の合理化、システムの共有化なんかも今後は出てくるでしょう。(レジの統合とか。フジは内税、イオンは外税精算なので、フジも外税清算(もしくはマルナカなどが内税精算)っていうのもあり得る)
愛媛県四国中央市にあったイオン川之江店も閉店後、フジとのダブルネームで食品スーパーと小規模モールとしてリニューアル予定です。これも強化の一環となるんでしょうね。
資本提携当時、フジはイオンとの関係を深くすることはなく、独立したやり方を行なってきました。ただ、WAONが使えるようになったり、一部トップバリュの商品を入れたりとイオンのものを入れてます。
将来的にどうなるの?
来年3月1日付でフジ(初代フジ)は「事業会社」から「共同持ち株会社(中間持ち株会社)」に鞍替えし、事業会社として新しくフジ(二代目フジ・仮称)を立ち上げる予定です。
ちなみに、初代フジ(持ち株会社)の法人は変更なしで「株式会社フジ」になる模様。(同じ持ち株会社のイオンや中部日本放送(CBC)と同じ。)
「株式会社フジホールディングス」になっちゃうとフジテレビの持ち株会社「株式会社フジ・メディア・ホールディングス(フジHD)」と混同してしまうからというのもあるかもしれませんね。(実際は慣れ親しんだ名前にするとのこと)
つまり、事業会社である二代目フジは「株式会社フジ」以外の法人になるということかな?
同時に初代フジはイオンの連結子会社となり、イオングループ入りすることになります。
二代目フジとマックスバリュ西日本は初代フジの子会社となり、マックスバリュ西日本は上場廃止、非上場となります。
初代フジ(持ち株会社)の方は今後も上場を維持し、フジの屋号もマルナカ同様そのままです。
(2022.1.27追記)
昨年末にフジとイオンは正式に3月1日以降の再編を発表。持ち株会社の社名はフジの尾崎英雄会長がRNB南海放送へ回答した通り「株式会社フジ(屋号そのまま)」で、事業会社が「株式会社フジ・リテイリング」となります。MV西日本は上場廃止、イオンはフジの持ち株比率を51.5%まで上げてイオンの連結子会社となる模様。
なお、本社は松山市(フジグラン松山)のまま。
また、1月20日にサニーTSUBAKIの3店舗を一旦閉店し、スーパーABC(道後店、桑原店)およびフジ(古川店)に屋号を変更する予定。よって表に書いているサニーTSUBAKIは事実上の消滅となります。
最終的にフジはイオンの連結子会社となることからフジはマルナカを傘下に収めることになります。
参考サイト:https://www.the-fuji.com
2024年3月に初代フジ、二代目フジ、マックスバリュ西日本は合併し、新会社設立(社名は不明)となる予定です。これによって山陽四国、兵庫県にフジ(マルナカ、マックスバリュ)を構えることになります。
上場廃止、イオンの完全子会社化についてはここでは言及されていませんが、多分ないと思う。あり得るパターンはいなげやみたいにイオングループに入ってるけど、上場はキープしているパターンかな?
そもそも、ニチイとダイエーは経営破綻によるイオングループ入り。逆に中四国で堅調に成長しているフジは生き残りとシステムの最適化やイオンの弱点を補うことによるイオングループ入りなので、台所事情が全く違います。
そうじゃなかったらABC、サニー TSUBAKIの救済(屋号は廃止)、ニチエーの買収、しんばしの資産や天満屋(広島緑井店)の建物を買いませんよ。
同様に本社も松山市から広島市に移転することもあり得るし、松山と広島の2本社体制にすることもあり得るでしょう。(県外移転になったら税収の関係で愛媛県や松山市が黙っていないと思うが・・・)
いずれにしても、イオングループとしてはイオンリテール、イオンモール、そしてフジが中四国のスーパーマーケットを展開し、フジが実質中四国のイオングループを掌握することになります。イオンリテールとイオンモールは主にショッピングセンターが中心となっているので、棲み分けもとりあえず問題なし。
追記
先日愛媛新聞はフジの尾崎英雄会長へのインタビューを行いました。尾崎会長は「フジの本社は松山市のままだが、判断しやすい場所として広島も重要な場所なので、整理していく」とおっしゃっています。
やはり社員はもちろん、愛媛県の中村時広知事、松山市の野志克仁市長、松前町の岡本靖町長からと言った自治体トップも不安があったんじゃないでしょうか? その時も「エミフルはイオンモールの変わるのか?」「変わりません」と言った会話があったそうです。
参考サイト:https://www.ehime-np.co.jp/article/news202112060010
悲観的な意見もあると思うが、「今は」問題はなさそう。
四国がイオングループだらけになるという意見もあります。そりゃ香川県でもマルナカがあるためか大量のイオン店舗がある状態ですからね。それにフジが入るので、愛媛県も香川県と同じ状態になるということです。(徳島県と高知県はそこまでない)
ただ、イオンも中央集権的なものではアカンと考えているでしょうから、中四国のイオングループの店舗(マルナカ、マックスバリュなど)はフジが中心となって(イオンの手を借りながら)今後も独自でやっていくんじゃないでしょうか?
それはイオンモールやイオンリテールの店舗と大幅な差別化をするためでもあると思う。そうじゃないとワンパターンな店舗で嫌悪感を抱く消費者もいるからね。
伊丹十三監督(愛媛県と関わりが深い)のスーパーの女でも伊東四朗さん演じるライバルスーパーの社長が「一緒になってライバルがいなくなれば自分らで好きな値段がつけられる、いいとこづくめ」と言います。
主人公の主婦である宮本信子さんが「主婦にとっても絶対に許せない」と激怒、津川雅彦さん演じる専務が経営するスーパーで働きます。それだけワンパターンなイオンだらけというのも問題あり。
マルナカはイオングループ入りしてから香川のスーパーとしての求心力や品質(人によるが)等が低下してる意見があるのも事実。その解決策としてフジに助け舟を出してると思うよ。逆にマルナカがフジになるって感じかな?
もし、フジが吸収合併とか店舗統合で閉店とか屋号廃止とか言われたら今以上に言われるのは確実です。それだけイオンもフジも慎重になっているでしょう。
フジのライバルであるイズミもセブン&アイHLDGSと関係を深くしていますが、資本関係はまだ薄いです。これが今後イズミもフジが実質兵庫県進出となることからセブン&アイHLDGSと資本提携や統合もあり得ると思います。
イズミもフジと同様にイトーヨーカ堂などの救済がメインなので助け舟を出してる状態(イズミにとっては恩返し)なんですよね。
今後もすごい展開になりそうですね。今後もフジ、イオンとイズミ、セブン&アイの中四国スーパーマーケットに目が離せません。
リンク及び参考出典。
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